2019秋季総合特集 トップインタビュー
 

三井物産アイ・ファッション

三井物産アイ・ファッションは今期(2020年3月期)、中期経営計画の最終年度を迎えた。前期には売上高が前倒しで目標を達成するなど、業績は好調に推移している。そうした状況下で、5月に現社長の今井徳氏が経営のバトンを受け継いだ。今井社長は就任以降、好調な業績を維持しながら、時代の変化に応じて商社機能を進化させるという命題に向き合っている。

「作れば売れる」の発想転換

代表取締役 社長執行役員 今井 徳 氏

-日本の繊維産業の潜在力は、どういったところにあるのでしょうか。

日本の繊維産業は衣料であれ産業資材であれ、川上から川下にかけて優れた商材があります。しかし、売り出し方が得意ではありません。「いいモノを作れば売れる」という旧来の発想の転換が迫られています。

グローバル化が加速し、マーケティングの重要度が高まっているにもかかわらず、対応が遅れ気味になっている。それが商社から見た日本の繊維産業の実情です。時代とずれた状況を是正するには、マーケティングやブランディングにより、潜在的な力を定量化する、あるいは定性的にでも世界へ向け発信していかなければなりません。

これらにしっかり取り組めば、まだ伸び代が見込めるでしょう。世界の繊維市場は成長していますし、決して悲観することはないと思います。

-今の経済環境をどう見ていますか。

この1、2年、世界各地の政治的問題が噴出し、経済情勢を不安定にしています。世の中全体が大きく変化していく中、今起きている一つ一つの事象に対し、当社も明確な見識を持つ必要があります。三井物産のネットワークも活用し、生きた情報を顧客との対話に落とし込むのも、商社ができるサービスの一環であると捉えています。

-19年度の上半期(4~9月期)を振り返っていかがですか。

現場がここ1、2年で苦労して打ってきた施策の成果が、数字に表れています。例えば、自社工場の生産ラインを活用してアパレルに製品を供給する事業が成果を出し始めました。全体の業績も計画を上回る見通しです。

-下半期に取り組む施策は。

大きく三つあります。まず一つ目は、目前のビジネスで他社との競争に勝ち、しっかりと利益を確保すること。各分野とも市況は簡単ではなく、好調を維持してきた欧米のスポーツ市場さえ雲行きはあやしい。日本のアパレル市場が厳しいのは言うまでもなく、原料の分野にも米中貿易摩擦の影響がある。この厳しい環境でも、着実にもうけを出せる道筋を作らなければなりません。

二つ目は、貿易を中心とした既存のビジネスモデルの高度化を推進すること。具体案が各分野の現場から複数出され、既に実行に移った案件もあります。これらの案件を量・質ともに充実させるため、投資を含むアセット(資産)や仕組みを活用しなければなりません。

三つ目は「業務改革」です。商社としての従来とは立ち位置を変えたビジネスモデルの構築を目指します。デジタル化やブランディングを取り入れ、成長の伸び代が見込める海外市場の深耕を図ります。

二つ目と三つ目の取り組みは絶えず連動します。本来、商社は多様な手法で利益を上げる業種です。川上から川下まで、商社機能をより発揮できるかを追求していきます。実際、規模が大きい機能性素材の取り扱いや原料の投資案件が生まれ、海外では新しい製品の案件もスタートしています。

-長期的な重点方針は。

三井物産のファッション部隊との連携が鍵になります。当社の経営資源やノウハウでは対応しきれない案件について、三井物産と協調して対応できることは競合他社との差別化につながります。

こうした連携は、これから本腰を入れるB2C事業にも活用できます。例えば、三井物産がアジアで手掛ける越境EC(電子商取引)に、当社のお客さまも参画していただく。また、当社のB2C事業に、三井物産グループのECを担う企業を活用することができるのは強みになります。

ただし、商社がB2Cに進出することを目的化するのではなく、結果を出さないといけない。どんなにコンセプトや仕組みが立派でも、消費者から共感を得られる商材でないと売れません。

商社がB2Cを手掛けることのハードルは決して低くないですが、社員は果敢に挑戦してほしい。その上で、詰めの段階では、きちんと成果を出せるかを検証する冷静さの重要性も訴えています。

-今後の繊維業界にとって最大のインパクトと思われることは何ですか。また、対応策とは。

サスティナビリティー(持続可能性)への対応が一層求められるので、サプライヤーと連携し、ニーズに合った商材を供給する体制を強化します。消費者セントリックス(主体)の傾向が強まることを意識した、ビジネスモデルの確立も今後の課題です。

私のリフレッシュ法

アジアの田舎の風景に癒される

「旅と食は何よりの充電法」と今井さん。「アジア好き」を自称し、時間がとれればタイやラオスを訪れる。「とにかく田舎が好きで、懐かしさを覚える風景には心が洗われる」。海外旅行を充実させる秘けつは「訪れた土地の慣習を守ることと」と言う。

日常の合間に楽しむ外食にもこだわりを持つ。「いわゆるグルメとは違い、肩肘張らずに済む店に行く。カウンター越しに調理をしている人と会話するのが楽しい」。ちなみに、味は辛いのが好み。食べ物の好みも、アジアに引き付けられる要因かもしれない。

2019年10月30日(水) 繊維ニュース11面

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